更新情報Updates

初習言語FD講演会「初級者を対象としたCLILと外国語教育(2)」(講師:原田哲男氏)が開催されました。

 2018年10月20日に、言語教育研究センター主催のFD講演会「初級者を対象としたCLILと外国語教育(2)カリキュラムに対する教師の意識改革とその実践」が開催されました。早稲田大学教育・総合科学学術院の原田哲男教授をお迎えしての講演は前回に続き2回目で、今回はカリキュラム・デザインと学習内容に焦点を当ててお話しして頂きました。英語、日本語、そして、ドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語、コリア語等、様々な言語の先生方や学生、40数名が参加しました。

 まず、CLIL(Content and Language Integrated Learning)が、「目的を持って、言語を使いながら、内容を学び、その内容を通して言語も学ぶこと」であることを確認しました。そして、文法や語彙といった個々の要素を積み上げて全体を作る「積み上げ式シラバス」から、全体から個へと向かう「統合的シラバス」へと教師の意識を変えることの重要性が指摘されました。

 次に、カリキュラムをデザインする際には、それに関わる全ての者による方向性の検討、(社会的、経済的、政治的、組織的)状況分析、そして学習者のニーズの分析が必要で、そこからプログラムの目標および内容が決定されることを学びました。学生のニーズの把握は特に重要で、そのためにはアンケート調査に加え、個人やフォーカス・グループへのインタビューも行なう必要があるそうです。

 続いて、学習内容についてのお話がありました。CLILでは、言語と内容の両方を学ぶため、バランスをどう取るかが気になるところですが、言語と内容の平衡仮説(普段の言語学習環境で学習者の注意が向けられる対象と逆方向に注意を向けると効果的であるという仮説)から、注意が言語と内容の間を行ったり来たりするような意図的な指導の示唆がありました。

 学習内容として文化を考える上で、米国の外国語教育における5つの教育目標領域(Communication, Cultures, Connections, Comparisons, Communities)の紹介がありました。特にCommunicationとCulturesが密接に繋がっていることから、文化を、Practices(生活習慣・慣習)、Products(文化的産物)、Perspectives(その背景)という3つのPを通して考察することを提案されました。

 CLILの枠組みで実際に授業を行うために必要な手順や示唆をたくさん頂くことができ、大変有意義な講演でした。また原田先生は、初めから全ての授業でCLILを使うのではなく、1つのユニットから始めることを勧めていらっしゃり、これからCLILに挑戦する先生にとってハードルが低くなったのもありがたいことでした。

ソーシャルメディア