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日本語FD講演会「日本語中級学習者の学びと教師の役割」(講師:奥野 由紀子氏)が開催されました
10月19日(土)に言語教育研究センター主催のFD講演会が開催されました。首都大学東京の奥野由紀子先生をお迎えして、「日本語中級学習者の学びと教師の役割」について講演していただきました。日本語中級学習者は、初級と異なり、習得の伸びが緩やかになり進歩が見えにくいので、学習者本人にとっても教師にとっても重要な踏ん張りどころとなります。中級は、自分の思考や気持ちや価値を伝え、自分らしい日本語使用者になることを目ざす時期だととらえ、それをサポートするために行った実践例を紹介していただきました。
まず、来日時に中級だった日本語学習者の10年にわたる追跡調査の結果が示されました。学習者の発話から、日本語のレベルが上がっていくだけでなく、環境の変化に応じて学習者自身の日本語使用者としての意識も変化し、それが発話スタイルにも影響していることが明らかになりました。そして、中級段階で人間関係を築く上で必要になる雑談が聞けるようになることを目標に開発された、聴解教材の例が紹介されました。それは、従来のように、第三者として会話を聞いて内容を確認するのではなく、聞き手参加型の聴解練習、当事者として会話を聞き、聞き取った内容に合った反応や応答を返そうというものでした。
また、内容や思考に意識を向けながら既習文法が使えることを目ざして、日本語中級の授業に導入したCLIL(内容言語統合型授業)の実践についても話されました。このような授業は、第二言語習得の視点から見ても、自分の考えや思いを伝える機会を提供し、内容を学びながら言語形式にも注意を向けられ、動機づけを高めるという点で有効だということが示されました。CLILを内容の専門家ではない言語教師が教えることについて、学習者と共に、あるいは一歩先に学び、教師自身が教師として、人間として成長していくことが大切であるとのお話で講演は締めくくられました。50名以上の参加者には、中級の授業のあり方を考えさせられる有意義な時間となりました。