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日本語FD講演会「習得研究から日本語教育へ-誤用分析・コーパス研究・シャドーイングを繋ぐもの-」(講師:迫田 久美子 氏)が開催されました

2月25日(土)に言語教育研究センター主催のFD講演会が開催され、約70名が参加しました。広島大学特任教授・副理事の迫田久美子先生をお迎えして「習得研究から日本語教育へ-誤用分析・コーパス研究・シャドーイングを繋ぐもの-」という題目で講演していただきました。コロナ禍でオンライン開催が続いていましたが、今回は3年ぶりの対面開催となり、講演者も参加者も、改めて対面の良さを実感することができました。この講演では、「研究は教育に生かせるか」という問いかけから始まり、迫田先生が、ご自身の教師生活、研究者としてのキャリアを振り返りながらお話ししてくださり、参加者にとっても研究や教育のあり方を考える機会となりました。

まず、研究者としての出発点として始めた誤用分析のデータから、日本語学習者の典型的な誤用が提示され、誤用の原因はとかく母語の影響とまとめられがちですが、母語の異なる学習者からデータを取ってみると、必ずしも母語の影響とは言えないことが示されました。母語の影響以外にも、学習者は学習者なりに工夫して言語を使おうとしており、さまざまな要因から生み出される学習者の誤用を調べることの面白さを紹介してくださいました。

その後、迫田先生は国立国語研究所にいらした時代に、I-JASという1000人近い日本語学習者のコーパス構築のプロジェクトの指揮を取られ、コーパスを完成させたのですが、その概要を説明してくださいました。このコーパスには海外の教室学習者、国内の教室学習者、国内の自然習得環境の学習者、さらに日本語母語話者の発話を中心とするデータが収められており、研究者にとって非常に有益なデータであることが紹介されました。さらに、このコーパスを使った迫田先生ご自身の研究についてもご紹介がありました。

さらに、最近取り組んでおられるシャドーイング(聞こえてくるスピーチに対して即座に口頭再生する練習)についてもお話があり、言語運用の自動化の促進を目ざしているということです。学習者の誤用を見るだけでは日本語が使える学習者を育てられないので、できる学習者を育てる活動に目が向くようになったというお話でした。シャドーイングの効果を見た実証研究や、授業でのシャドーイングのやり方などの紹介もありました。

そして、最後に、迫田先生ご自身が考える「研究するために必要なこと」「教えるために必要なこと」について私見を述べられ、締めくくりとなりました。講演は盛り沢山かつ有意義なお話で、盛会のうちに終わりました。

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