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秋学期日本語クラス受講生、Maud Chautardさん、詹子萱さん、Ariel Oliverさんの作文が朝日新聞「声」欄に掲載されました。
言語教育研究センターのIntensive Japanese 4の受講生、Maud Chautardさん、詹子萱さん、Japanese Literacy 1の受講生、Ariel Oliverさんの作文が、朝日新聞の「声」欄に掲載されました。作文指導を担当する、野口潔講師の授業で書いたものです。
原文(日本語)と、ご本人たちによる各言語への翻訳を掲載いたします。
日本語版
フランス人はみな大根が好き?
留学生 モード ショタール(23)
高校生で初めて日本に留学した時、母国フランスでは珍しい白くて長い大根に憧れていた。「日本の食べ物で何が好きですか」と聞かれるたびに「大根です」と答えていた。
ある日、知り合いの日本人に「フランス人って、大根好きなんだ。知らなかった」と言われた。大根が嫌いなフランス人もおそらくいるだろうと言っても、「フランス人、大根好きなんだ」と繰り返されてしまった。しかし、私はフランス人の好みを代表しているわけではない。
知らないことについて偏見や固定観念を持つのは、もちろんフランスでもあることだ。それをなくすためには、いろいろなことを学ぶしかない。思い込みをなくすきっかけがあったら、ちゃんと話を聞いてほしい。1人のフランス人が大根好きでも、フランス人全員が大根好きだというわけではないですよ。
(2023年12月12日朝日新聞朝刊)
フランス語訳
Tous les Français aiment les radis japonais ?
Maud Chautard
La première fois que je suis partie en échange au Japon quand j’étais au lycée, j’avais un petit faible pour les radis japonais.
À chaque fois que l’on me demandait ce que j'aimais dans la cuisine japonaise, je répondais:
“le daikon !”
Un jour, un Japonais m’a dit:
“ Alors comme ça les Français aiment le radis Japonais ? Je ne savais pas…”
Même si j’ai expliqué qu’il y avait certainement des Français qui n’aimaient pas ça, il n’a pas cessé de répéter:
“Alors comme ça les Français aiment le radis japonais!”
Mais je ne représente pas les goûts de tous les Français à moi toute seule.
En France aussi les gens ont des préjugés au sujet des choses qu’ils ne connaissent pas. Pour corriger cela, j’imagine que tout ce que l’on peut faire c’est apprendre beaucoup de choses. J’aimerais que les gens écoutent quand ils ont l’occasion de remettre en question leurs idées préconçues. Même si une Française aime le radis japonais, cela ne veut pas dire que tous les Français aiment ça.
日本語版
恐れずに英語、生活に新たな風
留学生 詹子萱(せんしけん)(21)
留学生として台湾から日本の大学に来て、世界各国の人々と出会った。皆、日本語を勉強し始めたばかりだから、英語で話すことが多い。これまで英語で話す機会がなかったので、最初は口を開くのが怖かった。
目を合わせないようにすると、話しかけてくる人は一人もいなかった。私が何も話さなければ、他の人が私は英語が話せないと判断する。それで外国人の友達をつくれないと悩んだ。自分の国で何年も英語を勉強したのに、ここに来て話さないのは無駄だと思い、勇気を出し簡単なあいさつから英語で話した。
実際に口にすると、発音や文法を間違えても、やり取りを通じて言いたいことが理解できた。英語の会話に慣れると、米国人と英国人の友達ができた。黙ったまま留学の期間を過ごすなら、私の母語以外の言語を使う人と仲良くなる機会がなかったかもしれない。
この経験から学んだことは、心配しすぎずに、まず一歩踏み出してみようという考え方だ。恐怖を乗り越えて生活に新しい風を入れてみよう。
(2023年12月17日朝日新聞朝刊)
中国語訳
無所畏懼的英語 為生活吹入新風
詹子萱(CHAN TZU HSUAN)
從台灣來到日本留學後,在這裡遇到了來自世界各國的人們。大家都才剛開始學習日文,平時都用英文溝通。在這之前我很少有講英文的機會,所以最初在和外國人交流時我都在一旁沈默著不敢開口。
我盡量不和別人眼神交流,但如此一來和我搭話的人連一個也沒有。如果我什麼都不說,別人應該會認為我不會說英文吧!因此我開始煩惱自己會不會交不到外國朋友。明明在台灣學了好幾年的英文,覺得來到這裡後什麼都不說的話就都白費了,所以我鼓起勇氣從簡單的打招呼開始說英文。
實際開口說之後,發現即使發音和文法不那麼完美也沒關係,透過和對方的來回交流中就能理解對方的意思。習慣了用英文說話之後,我甚至交到了來自美國和英國的朋友。如果我不開口說英文,就這樣默默地度過留學期間的話,也許沒有機會和中文母語者以外的人成為朋友。從這個經驗中我學到的是「不要想太多,勇敢跨出第一步」的想法,戰勝恐懼並為生活帶來新氣象吧!
日本語版
私には「出身地」がないけれど
大学生 オリバーアリエル(19)
「長く住んでるからって、ここの人にはなれないよね」。私が5年間住んだグアムでグアム出身のクラスメートに言われたことだ。確かに私はグアム出身ではない。でも一番長く住んだのはグアムだ。私には「出身地」がないのだろうか。
私の父はアメリカ海軍で働いている。私は生まれてから父の仕事に合わせ、ほぼ3年に一度、引っ越しを繰り返してきた。今、私は帰国子女が多い大学で学んでいるが、胸をはって「出身地」はどこですと言えなかった。ただ同じように様々な場所で育った友人たちと話すうちに気づいた。「出身地」がないことは様々な国の文化を理解し、それを受け入れる能力が身に付いていることでもある。「出身地」がないのは決して悲観することではない。むしろ私の自慢できる特徴の一つとして、隠すことなく、皆に紹介していきたい。
(2023年12月5日朝日新聞朝刊)
英語訳
Though I Do Not Have a Hometown
Ariel Oliver
“Just because you have lived here long, doesn’t mean you’re from here.” This is a statement I received from a Chamorro classmate in Guam, where I lived five years. Surely, I am not from Guam. However, Guam has been the place of my longest residency. Do I not have a hometown?
As my father is in the U.S. Navy, he moves to Navy bases around the world in a span of one to four years, regardless of families’ circumstances. Therefore, ever since I was born, I have moved approximately every three years to accommodate my father’s job. Today, I go to a University in Tokyo known for its international students, yet I have not been able to proudly define a specific hometown. However, as I conversed with friends with similar backgrounds, I came to realize. Not having a “hometown” means that we have the ability to understand and further accept various cultures of many countries. Not having a “hometown” is not despairing. It is rather a feature that I want to introduce to everyone without hiding, as something that I am proud of.