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中国語の多様性を覗き込む

黄 琬婷

みなさん、中国語はどこで話されている言語だと思いますか。

中国語というと、中国で話されている言語(「普通話」と呼ばれる)と思われがちですが、実際は台湾、シンガポール、マレーシアなどの中国語圏でも中国語(方言を含む)が話されています。その他、日本、アメリカ、オーストラリア、主にイギリスなどのヨーロッパにおいて、現地の中国語母語話者によるコミュニティでも中国語(方言を含む)が話されています。このように、中国語は世界各地に渡って使われていることから、中国語を話す人や話される場所の多様性が見られますね。

また、中国語の漢字の字体にも多様性があります。本学のホームページの画面にこのような表示があります。「中文簡体/中文繁体」は一体何のことでしょうか。


https://www.sophia.ac.jp/

「中文簡体」は簡体字(Simplified Characters)のことを指し、従来の漢字(繁体字)を簡略化した字体で、現在主に中国、シンガポール、マレーシアなどで使われています。一方、「中文繁体」は繁体字(Traditional Characters)のことを指し、従来のままの形の漢字を意味します。現在主に台湾、香港、マカオなどで使われています。この二つの字体と日本語の漢字を比較してみましょう。

日本語の漢字 簡体字 繁体字

日本語の「本」を見ると、三つの字体はすべて同じです。一方、「東」の場合、日本語の漢字と繁体字は同じですが、簡体字は違います。「学」になると、今度は日本語の漢字と簡体字は同じですが、繁体字は異なります。さらに、「図」のように三つの字体が異なるものもあります。

漢字の字体の違い以外にも、現地の社会状況、文化や習慣などによって、単語、発音、文法などの面においてもバリエーションが見られます。単語そのものの違いを例に挙げれば、「インターネット」は、「普通話」では「网络」、「台湾華語」(台湾で使われる中国語)では「網路」となります。また、「タクシー」は、「普通話」では「出租车」、「台湾華語」では「計程車」となる一方、シンガポール・マレーシアでは「德士」(または「的士」)、香港・マカオでは「的士」と言います。このように、中国語には様々なバリエーションが存在しますが、基本的にベースは同じなので、ネイティブであれば、互いに意思疎通することはもちろん可能です。

ここで紹介した中国語の多元的な側面はほんの一部にすぎません。一概に中国語と言っても、教科書で習うような中国語が必ずしも用いられるとは限りません。みなさんが海外へ留学や旅行に出かけたときには、ぜひ現地のことばに触れ、中国語に対するイメージを広げてみてください。

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